プラズマ振動

プラズマの集団現象の最も典型的な例がプラズマ振動です。
電子の質量はイオンの2000分の1程度なので、電子の方が動きやすいので、イオンは固定されていて電子のみが動いていると考えます。
電子の分布に偏りができると、中和されるように電子が動き、これを繰り返すことで振動します。
この振動の周波数はプラズマの密度(=電子の密度)で決まり、密度が高いほど周波数も高くなります。
プラズマ角周波数は次の式で表されます。
$$ω_{pe} = \sqrt{\frac{ne^2}{mε_0}}$$

プラズマ振動には次のような面白い性質があります。
プラズマに電磁波を当てると、電磁波とプラズマ周波数との大きさの関係により電磁波が通過または反射されます。
 電波の振動数 > プラズマ振動数
  ⇒ 電波はプラズマを通過します。

 電波の周波数 < プラズマ振動数
  ⇒ 電波はプラズマにより反射されます。

プラズマ振動が関係する現象として、2つ紹介します。

1.電離層
地球を取り巻く大気の上層部にある分子や原子が、紫外線やエックス線などにより、電離してプラズマになっている領域を電離層といいます。上の層に行くほど紫外線が強く電離が多くなるのでプラズマ密度(電子密度)が大きくなり、下の層ほど電子密度が小さくなります。このため、上の層の方がプラズマ周波数が高く、高い周波数の電波を反射することになります。
国内向け放送に用いられる中波より、海外向け放送に用いられる短波の方が遠くまで届くのはそのためです。高音質の放送に使われるFM、テレビ放送に使われるVHF、UHFについては、周波数が高いため大量の情報を送ることができるのですが、電離層で反射しないため遠くまで届かないのです。

図1. 電離層と電波の反射

2. 金属の光学的性質
金属は、原子核が固定されて自由電子が結晶全体に広がっており、電子はプラズマ状態になっていると考えることができます。

図2. 金属結合

金属は電子密度が高く、プラズマ周波数は高くなります。光(電磁波)を当てると、プラズマ周波数より光の周波数より低い(波長が長い)場合は、光を反射します。これが金属の光沢(高反射率)の原因となっています。金属によって波長による反射率が異なるため、金属特有の光沢となります。

例えば銀の自由電子密度\(N=5.86×10^{22}cm^{-3}\)の場合、プラズマ周波数は、\(2.18×10^{15}Hz\)で、波長は320nmの紫外線に対応します。従って可視光は全て反射することになり、銀特有の光沢となります。

図3. 金、銀、銅の反射率の波長依存性

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